『自由に生きて演奏をしたいだけ、それが罪か?』|扉をたたく人(The VISITOR)/トーマス・マッカーシー監督
リチャード・ジェンキンス主演。
確か、「食べて、祈って、恋をして」に出演していたような。
リチャード演じる大学教授・ウォルターが主人公。
ひょんなことからウォルターが出会った移民のカップル、タレクとゼイナブ。日常の関わりの中で妻に先立たれて心を外には閉ざしていたウォルターは静かに、確実にリアルな生を感じ始める。一番のきっかけは、タレクが持ってきたジャンベという楽器。タレクはジャンベ奏者で、公園や夜のバーでのショーなどでジャンベを叩く。
そんな中、タレクが突如不法滞在で逮捕、留置所生活に。
留置所での面会を続けるウォルターと、日々不安が増していくタレク。
この映画では、9.11依頼不法移民の取締が厳しくなった社会の、リアルな1コマを写しだているが、一方で激しく訴えたい分かりやすい主張やテーマ、提起があるようには思わない。どちらかというと、「The VISITOR」という原題が表している通り、ドアをノックするその出会いからストーリーが回り始める(ウォルターとゼイナブとタレク、ウォルターとタレクの母親)、その1コマがたまたま移民青年と初老の教授の出会いであった、という普遍性と多様性にあると感じた。
最後のシーンでウォルターがタレクから預かったジャンベを地下鉄で叩き続けるエンディングは、それでも、その1コマの人生の重さをそのまま写している印象が強かった。